【りんごの秘密①】フロントは、安いとは限らない

安い商品がフロント商品。

もし、この言葉に少しも違和感を覚えないのなら、あなたはまだビジネスモデルの本質を見ていないのかもしれません。なぜなら、その裏には緻密な収益構造が巧みに仕掛けられているからです。

その収益構造とは。

それは「フロントエンド・バックエンド戦略」です。

フロントエンド・バックエンド戦略とは、まず入口となる商品(フロント商品)で顧客を集め、その後の商品・サービス(バックエンド)で利益を積み上げていく仕組みのことです。

そして、大抵の場合、フロント商品は「安いもの」です。

この構造を最もわかりやすく体現しているのが マクドナルド。

マクドナルドのハンバーガーやポテトは、驚くほど安い価格設定になっています。原価だけを見れば、正直、儲けはほとんどありません。

では、なぜあの値段で成立するのか。

答えは、フロント商品はあくまで「集客のための入口」だからです。ただし、その先にあるバックエンドは、多くの人が思っているものとは違います。

「セットでポテトとドリンクを買わせているんでしょう?」

半分正解ですが、それだけではありません。マクドナルドの本当のバックエンドは、「不動産賃貸業」です。

マクドナルドは、フランチャイズオーナーに店舗を経営させる際、土地と建物を自社で保有し、それをオーナーに賃貸します。しかもこの賃料は、実勢価格ではなく「売上高に連動した歩合賃料」で設定されています。実際、マクドナルドの年次報告書を見ると、フランチャイズ収入全体のうち「賃料が63%を占めている」という事実があります。つまり、ロイヤリティ(売上の数%)よりも、賃料のほうがはるかに大きな収益源になっているのです。

これは、消費者から見た「ハンバーガー屋」という顔と、決算書から見える「不動産賃貸業」という顔が、まったく別物であることを意味します。

安いハンバーガーは、客を呼ぶためだけの餌ではありません。同時に、フランチャイズオーナーの店舗の売上を伸ばし、賃料収入を増やすための装置でもあるのです。マクドナルド本部にとって、ハンバーガーが売れれば売れるほど、賃料という形で収益が積み上がっていく。だからこそ、本部は本気で「売れるハンバーガー」を作り込みます。

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Apple社はちょっと違う

では、Appleの場合はどうでしょうか。

Appleのフロント商品は、実は、iPhoneです。

ここで違和感を覚えた方も多いはずです。iPhoneは、決して安い商品ではありません。むしろ、スマートフォンの中でもトップクラスの高価格帯に位置しています。

「フロント商品は安いもの」という常識からすれば、これは明らかに例外です。

しかし、AppleにとってiPhoneは、間違いなく「入口」です。高くても、人はまずiPhoneを買う。そして、そこから先の世界に足を踏み入れていく。フロント商品自体で大きな利益を狙わない、という構造だけは、マクドナルドと変わりません。

では、Appleのバックエンドはどこにあるのか。

答えは、サブスクリプションを中心とした「Services」事業です。

  • App Storeの手数料(デジタルコンテンツの課金額の15〜30%を徴収)
  • iCloudの月額課金
  • Apple Musicなどのサービス群
  • AppleCare、Apple Pay手数料、広告収入

ここで、数字を見てみましょう。

Apple全体の粗利率は47.1%ですが、これはハードウェア(35.9%)とServices(75.7%)という、まったく性質の異なる2つの事業の合成値です。

ハードウェアの粗利率がほぼ横ばいで推移している一方、Servicesの粗利率はこの10年弱で55%から75%まで上昇しています。

さらに売上構成を見ると、iPhoneが依然として全社売上の50〜52%を占める一方、Servicesは約26%。金額としてはiPhoneの方が圧倒的に大きいのに、利益率で見るとServicesの価値は別次元なのです。売上の4分の1程度のセグメントが、7割超の粗利率を叩き出している。これが、Appleが年々Servicesに力を入れる理由です。

iPhoneという高額な入口を突破した先で、Appleは継続課金というバックエンドで利益率そのものを底上げしています。フロントの商品自体で稼ぐマクドナルドの不動産モデルとは逆に、Appleはフロントでは(相対的に)薄利で、バックエンドの高粗利事業で会社全体の収益性を引き上げる、という設計です。

まとめ

フロントエンド・バックエンド戦略の本質は、「フロントは安く、バックエンドで稼ぐ」という一つの型に収まるものではありません。

  • マクドナルド:安いハンバーガーで集客し、実態は売上連動の不動産賃料で稼ぐ(バックエンド収入の63%が賃料)
  • Apple:高額なiPhoneで入口を作り、粗利75%超のServicesで会社全体の利益率を引き上げる

つまり、フロントとバックエンドの設計は、企業の商品特性によって異なるのです。「フロントは安いはず」「バックエンドはこういうものだろう」という思い込みだけで自社の戦略を組み立てると、本当に稼ぐべき場所と、実際の決算書の中身がズレていきます。

皆さんのビジネスのフロントとバックエンドは、どこに設計されていますか。この構造を見直したい。そんな時はぜひおジャパンまでお問い合わせください。

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